9月13日に北村滋氏(前内閣情報官)が外交・安全保障政策の総合調整を担う国家安全保障局長に就任した。霞が関(官界)は嫉妬が渦巻く世界だ。外務官僚はマスメディア関係者に「警察庁出身で外交や安全保障の素人である北村氏に国家安全保障局長が務まるはずがない」という情報を流している。実情を知らない記者が、そのような情報に踊らされ北村氏の外交能力に疑問符をつけるが、それは間違っている。

北村氏の前職である内閣情報官は日本のインテリジェンスコミュニティのトップだ。CIA(米中央情報局)、モサド(イスラエル諜報特務局)、SVR(ロシア対外情報庁)などの長官がカウンターパートだ。表の外交で処理しにくい事柄は、インテリジェンス機関が処理する。北村氏は、インテリジェンスの第一人者であり、秘密外交の世界で鍛えられた外交と安全保障のプロでもある。

外務省出身で初代局長を務めた谷内正太郎氏は退任した。谷内氏は、ロシアとトラブルを起こしたことがある。〈プーチン氏側近のパトルシェフ安全保障会議書記は2016年11月、日ロ首脳会談を前に谷内正太郎・国家安全保障局長と会談した際、56年宣言を履行して2島を引き渡したら「米軍基地は置かれるのか」と質問。谷内氏が「可能性はある」と回答したことで、交渉が行き詰まった〉(18年11月16日「朝日新聞」朝刊)。このとき外務官僚が「谷内さんはそんな発言はしていない。パトルシェフが嘘をついている」という情報操作を行い、それがロシア側に伝わって、ロシア要人は「谷内氏は信用できない」と警戒するようになった。このときにロシアとの信頼関係を取り戻したのが北村氏だった。