(撮影:尾形文繁)

「実は、私は自動運転の一番の抵抗勢力でした」

クルマには、交通事故が付きものだ。しかも、事故原因の大半は、ドライバーの不注意などヒューマンエラーである。

「交通事故死傷者ゼロの社会をつくるのが、われわれの究極の使命だ」

と、豊田章男は語る。

トヨタ自動車は、もともと理念の強い会社だ。大義を掲げる。大義は、挑戦の起爆剤であり、困難に直面した際、粘り強く乗り越えるエネルギーのもととなる。自動運転に取り組む大義は、交通事故ゼロである。

トヨタの自動運転技術の究極の目的は、単にクルマの完全自動運転ではない。

「よく、グーグルなんかと比べて、トヨタの自動運転は遅れているねといわれるけれど、出口が違うんですね」

と、副社長の寺師茂樹は語る。

IT業界の巨人、米グーグル系の自動運転技術開発会社ウェイモは2018年末、運転席に人が座る条件付きながら、自動運転タクシーを実用化した。トヨタとは明らかに発想が異なる。彼らの目標は無人運転だ。完全自動運転に一気にジャンプしようと、猛烈なスピードで実用化を進める。

完全自動運転の実用化に積極的なウェイモに対し、トヨタはかねて、臆病だと批判されてきた。

「実は、私は自動運転の一番の抵抗勢力というか、反対派でした」

章男は、18年5月18日、日本自動車工業会の会長就任会見で、そう述べた。