(撮影:尾形文繁)

「やってみて、初めてわかることもある」

2010年5月20日、米シリコンバレー・パロアルトにあるテスラ(当時の社名はテスラ・モーターズ)本社に、豊田章男の姿があった。隣には、当時カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー、さらに、テスラ会長兼CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスクが並んでいた。

【テスラ】2003年創業。米シリコンバレーに本拠を置き、EVやソーラーパネルの開発、生産、販売を行う。08年に同社初のEV「ロードスター」を発売して以降、セダンやSUVのEVを発売。EVベンチャーの先駆け。

席上、章男とマスクは、両社の技術に関する業務提携を発表し、トヨタ自動車はテスラに5000万ドル(当時約45億円)を出資した。

テスラとの提携をめぐっては、こんなエピソードがある。

提携発表の直前のことだ。トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカの執行副社長として米ケンタッキー州に駐在していた現トヨタ副社長の寺師茂樹は、久々に帰国し、名古屋の居酒屋で仲間と、名物の手羽先を食べていた。

すると、電話が鳴った。社長秘書からだった。

「寺師さん、社長が、今すぐサンフランシスコに来いと言っています」

「えッ。僕は今、日本ですから無理ですよ」

寺師は、慌てて、現地にいる部下を代理としてサンフランシスコに向かわせた。発表後、その部下から電話がかかってきた。彼もまた、猛烈な慌てぶりだった。