幸せそうな笑顔がこぼれた結婚パレードの両陛下(1993年6月9日)(日刊スポーツ/アフロ)

皇太子時代の天皇陛下が、警察にも内緒でお住まいの赤坂御用地を抜け出したことがある。

1992年10月3日土曜日。陛下は後部座席が黒いフィルムで目隠しされた小豆色の軽ワゴン車の後部座席に身を隠し、身の回りのお世話係「内舎人(うどねり)」が運転する車で赤坂御用地の門を後にした。先の両陛下が国民体育大会で山形へ向かった直後。記者の目が東京から離れるタイミングだった。

軽ワゴン車が目指したのは、千葉県市川市にある宮内庁の新浜(しんはま)鴨場。外務省職員だった雅子さまと待ち合わせ、昼食をとりながら語り合い、「結婚していただけませんか」とプロポーズした。しかし、返事は芳しくなく、陛下が落胆した時期もある。電話で思いを伝え、11月28日、次のデートが実現する。場所は赤坂御用地内の東宮仮御所。今度は雅子さまが小豆色の軽ワゴン車に潜んで門内に入った。「僕が一生、全力でお守りしますから」。この日の言葉が心を動かし、12月12日、雅子さまはプロポーズを受ける。

「前代未聞のことだったかも知れませんけれども、雅子さんのことは、一生かけて本当に力を入れていたことでもあり、警備なしという極めて無防備な状態であった訳ですけれども、それをする価値は十分にあった」。後に陛下はこう語っている。