有料会員限定

「日本の近代化」を体現 明治天皇は大帝に変貌した

✎ 1〜 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 最新
拡大
縮小

幼い天子は国家の発展とともに、偉大な天皇になっていった。

明治天皇(1852〜1912年)アジア初の近代国家の君主。写真嫌いで有名で残された写真は少ない(アフロ)

特集「天皇と日本史」の他の記事を読む

明治天皇は崩御するとすぐに、「明治大帝」と名付けられた本が刊行された天皇であった。大帝という言葉には、国民が抱く、近代国家の君主としての畏敬の念と、明治になって発展した国民自らの矜持が感じ取れる。

江戸時代の天皇は、庶民にとってはその存在がなんとなく知られている程度であり、武士をはじめとする知識階級にとっては、文雅の人、あるいは祭祀をつかさどる存在であったろう。

日本の近代は幕末、外圧によって始まった。外国の脅威に対抗するために日本らしさが考えられ、「天皇による統治の継続」が発見される。幕府の対外政策が批判され、天皇が将軍に政治を委ねたという大政委任論が強まって、天皇と朝廷の政治が望まれた。幕府を倒した新政府は、天皇中心の政府、天皇が親政を行う政府であることが求められた。

しかし江戸時代の天皇はあくまでも京都の文雅の存在であった。そのあり方を変えなければならない。新政府の大久保利通は、鳥羽伏見の戦い(1868年)の後、宮中に閉じこもる天皇から人々の前に現れありがたいと思われる天皇への変換を、いち早く唱えた。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
天皇と日本史
古代、中世から宗教、天皇論まで
英国王室と国民の関係
日本、英国、タイ、スペイン…
迷宮の女帝論議
小林よしのり「伝統と因習を履き違えるな」
「男系を異様に重視するのは、一種のカルトに近い」
戦地慰霊、企業視察で「平成流」を実践
皇室のお金と使い道
天皇・皇后両陛下の結婚秘話
第2章 平成・令和の天皇像|公務の幅を広げようとする令和の時代の天皇像
立命館アジア太平洋大学(APU) 学長・出口治明の私の天皇論
鎌倉時代に消えた天皇の守護者
天皇も実物は見たことがない
昭和天皇の「終戦構想」
最高司令官としての昭和天皇
明治天皇は大帝に変貌した
天皇の復権を図った光格天皇
後醍醐天皇|文化の庇護者の役割
院政の創始者、白河天皇
国の基礎をつくった天皇夫婦
第1章 日本史における天皇|律令国家の創始者 天武・持統天皇
天皇と日本史
いま知っておきたい
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内