アイン・ランドの考えを世界で広めようと活動するヤロン・ブルック氏。同氏は1961年イスラエル生まれ。米テキサス大学オースティン校でファイナンスの博士号を取得。米サンタクララ大学教授を経て、米アイン・ランド協会会長。(撮影:ヒダキトモコ)  
2大政党への不信を背景に、米国で増えているのがリバタリアン(自由至上主義者)だ。リバタリアンや保守派に最も影響力を与えた思想家の一人として挙げられるのが、小説家のアイン・ランドだ。ロシア革命後のソ連から逃れたランドは、自由の尊さを訴える作品を執筆、多くの読者を獲得している。そんなランドの思想を広めようと活動する米アイン・ランド協会のヤロン・ブルック会長に、リバタリアンが増える背景を聞いた。
※8月10-17日号第2特集 「ルポ・アメリカ 若者の反乱」の関連インタビューです。

 

――ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)に、なぜリバタリアニズム(自由至上主義)が支持されているのでしょうか。

現状のアメリカ社会がうまく機能していないことが背景にある。アメリカと世界を混乱に導いているドナルド・トランプ大統領の誕生がその一例だ。若者は現状に不満を持ち、新しい考えを探し求めている。その結果たどり着いたのが、より自由な市場を求め、資本主義を強化するリバタリアニズムだと言える。

一方で、現状への不満の矛先として、リバタリアニズムとは反対の左派も増えている。バーニー・サンダースを支持する民主社会主義者の拡大も同じ原因だ。

リバタリアニズムへの支持が広がっている地域として、東欧が挙げられる。彼らは共産主義ならびに全体主義的な社会を経験した。かといって現状の社会がうまく機能しているかと言えば、そうでもない。その結果、アメリカの若者と同じく別の道はないかと考え、リバタリアニズムへの共感が広がっている。

また中国でも関心が高まっている。いまやアイン・ランドの多くの小説が中国語に翻訳されている。

――トランプ政権はそこまで問題だと。

法人減税や規制緩和といった政策は評価できる。だが、いい政策はほとんどないと言っても過言ではない。何よりも悪いのは、アメリカの政治を支える三権分立を踏みにじり、独裁的で権威を振りかざしている点だ。