二酸化炭素原因説を糾弾、米国の現状映す「政治の書」
評者・東洋英和女学院大学客員教授 中岡 望

『「地球温暖化」の不都合な真実』マーク・モラノ 著/渡辺 正 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Marc Morano/1968年、ワシントンDC生まれ。91年にジョージ・メイソン大学政治学科卒業後、ラジオ、テレビ、ウェブ界のジャーナリストとして活動。2009年からブログ「Climate Depot」を運営し、各国の科学者などとともに温暖化関連情報を発信。温暖化に関する映画も製作している。

米国は異なった世界観を持つ保守派とリベラル派に分断されている。例えば、悲惨な銃撃事件が繰り返し起こっているにもかかわらず、銃規制をめぐり保守派とリベラル派が激しく対立する。また妊娠中絶についても、保守派は女性の中絶権を認めた最高裁判決を覆し中絶の全面禁止を実現しようとしている。

同様に米国社会を分断している問題に「地球温暖化」がある。リベラル派は二酸化炭素(CO2)の増大が地球温暖化を招いており、その排出規制が喫緊の課題だと主張している。だが保守派は、地球温暖化はリベラル派の“陰謀”であり、地球温暖化を裏付ける科学データは改竄(ざん)されたものだと反論する。

こうした保守派の主張を受け、トランプ大統領は就任直後にパリ協定からの離脱を決定。さらにCO2排出の主犯である石炭産業の振興策を打ち出している。国連の緑の気候基金への拠出も取りやめた。

本書は、保守派の地球温暖化に関する主張を展開したものである。前半ではCO2が原因だとする脅威派の科学的、分析的な誤りを指摘し、後半では地球温暖化をめぐる政治問題に言及している。

著者の論点は「気温とCO2濃度に相関性はない」に尽きる。「地球の気温やモデル予測から、シロクマ、海面上昇、異常気象まで、脅威派が次々に繰り出す議論は、科学的知見や科学的データの裏付けがないか、むしろ逆のデータがある話だった。大気に増えるCO2が人類の将来を脅かすという主張は、科学の検証に耐えない」と、脅威派の主張を退ける。

さらに著者は、脅威派の大騒ぎには隠された狙いがあるのではないかと、批判の矛先を地球温暖化の危機を訴えるリベラル派の学者や地球温暖化対策の旗振りをするIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)に向ける。著者は、脅威派の学者は気候変動について騒ぎ立てることで巨額の研究助成金を手に入れていると批判。IPCCは先進国から途上国への「富の再配分」を図り、国連を中心とするグローバル・ガバナンスの確立を狙っていると指摘する。

当然のごとく本書は保守派の喝采を浴びた。著者はCO2による地球温暖化を否定する驚くほど多くの資料や学者の発言を引用している。確かに地球温暖化についての科学的議論はまだ終わっておらず、さまざまな立場からの検証は必要だろう。ただ、読み終えて感じたのは、本書は科学ではなく、政治の書であるということだ。