(撮影:尾形文繁)

「自分は“負け嫌い”だ。“連敗”は絶対にいけない」

トヨタ自動車東京本社地下1階の記者会見場に入ってきた豊田章男は、着席するなり、記者の顔ぶれを確認するかのように、上目遣いにゆっくりと記者席を見渡した。縁なし眼鏡の奥の目は、冷ややかな光を放っていた。よくない発表をするとき、彼はしばしばこの表情をする。

2017年5月10日、トヨタの同年3月期の通期決算説明会の席上でのことである。

確かに、決算内容はよくなかった。同年3月期の連結決算は、純利益が前期比21%減の1兆8311億円だった。5年ぶりの減益である。円高による採算悪化やコスト増が響いた。翌18年3月期の連結純利益も、同18%減の1兆5000億円の見込みだと発表した。

2期連続で減益ということは、スポーツの世界でいえば、“連敗”になる。「自分は“負け嫌い”だ。“連敗”は絶対にいけない」と、章男は現副社長の小林耕士に告げていた。

章男は近年、“負けず嫌い”ではなく、“負け嫌い”と言う。なぜならば、“負けず嫌い”では、「負けたことはないのに負けが嫌い」という意味になってしまう。そうではなく、「負けのつらさや苦しさを知っているがゆえに、負けることが嫌い」という意味を込めて“負け嫌い”と言うのだ。元大リーガーのイチローから教わった考え方である。

トヨタの原点は、トヨタ生産方式(TPS)と原価低減にある。トヨタのDNAだ。競争力の源泉である。

【トヨタ生産方式(TPS)】トヨタ自動車創業者・豊田喜一郎の「ジャスト・イン・タイム」の考え方などを、大野耐一らが体系的にまとめたもの。あらゆるムダを排除して生産効率を上げるのが基本。「かんばん」「自働化」などが知られる。