有料会員限定

「原価」のつくり込み 「豊田章男 100年の孤独」 第21回

✎ 1〜 ✎ 20 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 最新
拡大
縮小
(撮影:尾形文繁)

「自分は“負け嫌い”だ。“連敗”は絶対にいけない」

トヨタ自動車東京本社地下1階の記者会見場に入ってきた豊田章男は、着席するなり、記者の顔ぶれを確認するかのように、上目遣いにゆっくりと記者席を見渡した。縁なし眼鏡の奥の目は、冷ややかな光を放っていた。よくない発表をするとき、彼はしばしばこの表情をする。

2017年5月10日、トヨタの同年3月期の通期決算説明会の席上でのことである。

確かに、決算内容はよくなかった。同年3月期の連結決算は、純利益が前期比21%減の1兆8311億円だった。5年ぶりの減益である。円高による採算悪化やコスト増が響いた。翌18年3月期の連結純利益も、同18%減の1兆5000億円の見込みだと発表した。

2期連続で減益ということは、スポーツの世界でいえば、“連敗”になる。「自分は“負け嫌い”だ。“連敗”は絶対にいけない」と、章男は現副社長の小林耕士に告げていた。

章男は近年、“負けず嫌い”ではなく、“負け嫌い”と言う。なぜならば、“負けず嫌い”では、「負けたことはないのに負けが嫌い」という意味になってしまう。そうではなく、「負けのつらさや苦しさを知っているがゆえに、負けることが嫌い」という意味を込めて“負け嫌い”と言うのだ。元大リーガーのイチローから教わった考え方である。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内