都内のCHIのホテルには中国人の団体客だけでなく個人客も多い

富士五湖の1つ、山中湖のほとりに林に囲まれた建物がある。施設名の表示は外壁になく、一見するとマンションのようだ。夕刻になると約40人乗りの大型バスが次々と横付けしていく。バスから降りてくるのは中国人観光客ばかり。「今日も楽しかった」と笑いながら、大きなスーツケースやバッグを持って施設内に入っていった。

中国人団体客が宿泊する「富士山ガーデンホテル」を保有するのは、日本全国に約10ものホテルやリゾート、ゴルフ場を抱え、バス会社も持つCHIグループだ。同グループを率いる露崎強会長は、1987年に事業を立ち上げた華人の実業家。中国人観光客が増加するのを見越し、2000年代から首都圏や関西、九州で既存の宿泊施設の買収や建物のリノベーションを繰り返し、グループ傘下のホテルを増やしていった。山中湖で中国人の団体観光客が絶え間なく泊まりにくる富士山ガーデンホテルもその1つだ。

CHIグループのように中国人がホテルなどを買収して、インバウンド需要を取り込む例が増えている。富士山周辺のホテルで結成する業界団体のある関係者は、「中国人が次々と宿泊施設を買収して、中国人客を呼び寄せている」と実情を明かす。後継者がいない旅館や、経営が立ちゆかなくなったホテルを中国資本が買収。中国人客の誘致で事業を成り立たせているという。

実際、中国人が経営するホテルは増えている。ホテルや旅館の経営コンサルタントで、M&Aの仲介も手がけるホテル旅館経営研究所の辻右資所長は、同社が取り扱う案件でも「中国人による買収は前年比で30%増えている。中国・香港資本による買収が全体の7割を占めている」と話す。日本の不動産価格は上海や香港と比べて安く、オリンピック開催の影響で宿泊需要が増加するとの見立ても、買収増加の背景にあるという指摘もある。