住民の足だった公共交通機関が外国人だらけになる例は珍しくない(イラスト:さとうみゆき)

「ただいまの待ち時間は約30分です」──。江ノ島電鉄(江ノ電)の鎌倉駅では、5月の大型連休になると観光客が殺到し、駅の外にまで長い行列ができる。地元住民が駅に着いても乗車まで待ち時間が長く、生活に支障が出る。まさに「観光公害」の象徴だ。

江ノ電は鎌倉駅から藤沢駅まで14駅を結び、車窓から見える湘南海岸の景色や路面電車のようなレトロな雰囲気が観光客に人気だ。1日当たりの利用者数は2012年の1万6500人から17年には1万9205人へと、5年間で16%も増加した。一方で、4両編成で12分置きに運行する特性上、編成両数や運行本数をこれ以上増やすのは困難だ。全線単線で運行し、4つの駅と1つの交換所で上下線がすれ違うためだ。

江ノ電沿線は車を持たない高齢者も多く、乗車待ちの行列は地域住民の移動に支障を来していた。そのため17年3月、市議会議員らが江ノ電と協力して対策を取るよう、市に対し意見書を提出した。

ただ、混雑を解消しようにも輸送力に限りがある。そこで市と江ノ電は、沿線住民が優先的に乗車する仕組みの社会実験をしている。

具体的にはこうだ。5月の大型連休の際に「江ノ電沿線住民等証明書」を提示した乗客は、駅構外の行列に並ばなくても改札内に入れる。証明書は事前に市役所または鎌倉駅の出張所で、免許証などで住所を証明し発行してもらう。駅構外まで行列が発生した場合のみ、優先乗車が実施される。実施するかどうかは江ノ電が判断する。