(イラスト:谷山彩子)

論理的で素直で扱いやすい人物=「オールドタイプ」が重宝された昭和期から、直感的で頑固でわがままな人物=「ニュータイプ」が活躍する令和という時代へのシフトが、拙著『ニュータイプの時代』の主眼ですが、このニュータイプのお手本ともいえるような人物がいます。北大路魯山人です。よく知られていることではありますが、大ヒットした料理漫画『美味(おい)しんぼ』の主人公、山岡士郎の父親である海原雄山のモデルにもなった人物ですね。

おさらいすれば、北大路魯山人(本名は北大路房次郎)は昭和前半期の日本で活躍した芸術家で、その活動は篆刻(てんこく)・絵画・陶芸・書道・漆芸・料理・建築などの広範な領域に及び、そのすべてにおいて超一流といってよい実績を残した人物です。

また、魯山人は経済的な側面においても、「陶芸家」や「芸術家」と呼ばれる人々に対して私たちが抱く一般的なイメージとは懸け離れた成功を収めています。魯山人が開いた会員制の料亭「星岡茶寮」は、政治家や大企業経営者など、いわゆる「名士」が毎晩参じる一種のサロンのような様相を呈し、一時期は「星岡の会員に非ざれば名士に非ず」とまでいわれたほどの威勢を誇りました。最盛期には「金はいくらでも出す、うまいものを食わせてほしい」と会員資格を求める人々が後を絶たなかったといいます。

この時期、20代の若さで料理長を任されていたある料理人は「運転手付きのハイヤーで出勤し、給料は銀座でいくら使っても使い果たすことができなかった」と述懐しています。オーナー兼経営者であった魯山人にどれほど巨額の富がもたらされたかは、想像にかたくありません。

悪評の絶えなかった生涯