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北方領土交渉に関するロシア外相のシグナル 「主権」をめぐるロシア憲法との整合性が問題

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8月15日にロシアのモスクワ州ソルネチノゴルスクで行われた全ロシア青年教育フォーラム「意味の領域」において、ラブロフ・ロシア外相が北方領土交渉に関する重要なシグナルを出した。記者からの「クリル諸島(北方四島と千島列島に対するロシア側の呼称)はロシアの一部だが、この領土をめぐる日本側の要求は依然として続いている。日本との間でこの問題を解決する戦略はいかなるものか」という問いに対して、ラブロフ氏が応答した。

理路整然とした長い答えなので、この質問がなされることをラブロフ氏は想定していたと思われる。9月初めにロシア極東のウラジオストクで日ロ首脳会談が行われることを見越して、ラブロフ氏がメディアを通じて日本にシグナルを出したのであろう。当然、このような発言をすることについて、ラブロフ氏は事前にプーチン大統領とすり合わせている。

ラブロフ氏はまず、「戦略は単純だ。V.V.プーチン・ロシア大統領はこの問題へのわれわれのアプローチを一度ならず強調してきた。それは極度に透明で明白だ。ロシアはソビエト連邦の継承国である。ほかのすべての共和国は法的継承者であるが、われわれは法的継承者であるほかに、継承国でもある。われわれは1991年12月、まさにそのような性質を認められ、このわれわれの地位により自動的に国連安全保障理事会常任理事国の資格を継承した。それゆえにソ連が引き受けた国際的義務をわれわれは再確認し、履行する用意がある」と述べた。ラブロフ氏がロシアはソ連の継承国であることを強調しているのは、第2次世界大戦の戦勝国としての立場から北方領土問題に対処するというロシア外務省の基本的な交渉スタンスを確認するためだ。

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