アスペルガー医師とナチス 発達障害の一つの起源(エディス・シェファー 著/山田美明 訳/光文社/1900円+税/360ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile]Edith Sheffer 米カリフォルニア大学バークリー校欧州研究所の上席研究員。専門はドイツおよび中央ヨーロッパの歴史。著書に『Burned Bridge: How East and West Germans Made the Iron Curtain』(未訳、Paul Birdsall Prizeなどを受賞)がある。

医師にとって自らの名が診断名に冠されるのは名誉なことに違いない。だが「アスペルガー症候群」に名を冠した医師ハンス・アスペルガーにとって、それは胸を張って誇れた名誉だろうか。

アスペルガーは、ナチス統治下のオーストリア・ウィーンで小児科医として活躍した。敬虔なカトリック教徒でナチスにも入党しなかった彼は戦後、ナチスに抵抗した人物として評価された。また戦中に障害のある子どもたちを迫害から守るため、彼らには特殊な能力があると診断し、「第三帝国に貢献できる人材だ」と主張して命を救った経緯から、良心的な医師としても尊ばれた。

だが本書で描かれるアスペルガーの人物像は、これまでの慈愛と反骨のイメージを覆す。筆者が史料を丁寧に掘り起こすことで白日の下にさらした裏の顔は衝撃的である。