たった一度放送されただけで、世界を変えたテレビCMがある。「デイジー」と呼ばれる60秒の映像だ。1964年の米国大統領選挙で、現職だったジョンソン大統領の陣営により制作され、歴史的な大勝の一因となった。

時はベトナム戦争のさなか。同年8月には、北ベトナム軍が米海軍の戦艦に魚雷を発射するトンキン湾事件が発生していた。紛争激化の兆しといえる。タカ派と目される対立候補のゴールドウォーター上院議員は軍事介入の拡大を訴え、核兵器の使用にも積極的な姿勢を示していた。対するジョンソン大統領は、前年に暗殺されたケネディ大統領のリベラル政策を引き継ぎ、貧困の撲滅や公民権の拡大を公約に掲げていた。これが「デイジー」の背景だ。