福井県工業技術センターが開発、2013年に設置した薄層セミプリプレグシート製造装置と川邊和正さん。炭素繊維束を幅広く薄く開繊、シート化した状態のものに熱可塑性樹脂を半含浸させる装置だ(撮影:山根一眞)

福井県の炭素繊維技術がすごい、と耳にした。炭素繊維をプラスチックと混ぜて製造する複合材料、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)で実現困難なキーテクノロジーとされてきた「開繊」を、福井県工業技術センターが開発したというのだ。

その技術は欧エアバス社の旅客機、A320neoのエンジンにも採用されており、7月18日、福井県工業技術センター新産業創出研究部長の川邊和正さん(54)がIHIの満岡次郎社長とともにその航空機分野の開発で技術賞「井上春成賞」を受賞したとのニュースも飛び込んできた。開繊CFRPとはどういう技術でどう開発したのか、川邊さんに聞いた。

山根 炭素繊維は日本の発明、お家芸ですが。

川邊 広く使われているアクリル繊維を焼成して作る炭素繊維(PAN系)は、1960年代初頭に日本人が発明しました。今、日本メーカーの炭素繊維の世界シェアは60%以上といわれています。

最も生産量が多いPAN系炭素繊維は、アクリル繊維を蒸し焼きにして水素や窒素などを除去、最終的に2000~3000度の不活性気体中で炭素含有率90%以上に黒鉛化して作ります。太さが5~7マイクロメートル(毛髪の約10分の1)という極細糸ですが、比重は鉄の4分の1、アルミ合金の3分の2と軽く、強度(比強度)は鉄やアルミの10倍以上、剛性(比弾性率)は鉄やアルミの5倍以上。耐腐食性、耐薬品性、耐熱性にも優れた素材です。

炭素繊維素材はエコカーや風力発電のブレードなどでの需要が拡大しており、成長率が年10%といわれる期待の分野になりました。

山根 日本の炭素繊維メーカーの炭素繊維で、航空機の翼や胴体が製造されていますが。