財政政策への注目は、リーマンショック以降の10年強で格段に高まった。第2次安倍政権は発足当初に政策の1つの柱として「機動的な財政政策」を掲げ、現在もその重要性を強調している。

日本銀行はこれまでさまざまな金融緩和政策を実施してきたが、いずれの政策スキームも、2%のインフレ率を実現できていない。金融政策が目標を達成できていないことで、財政政策への期待もより高まっているといえるだろう。

しかし日本経済において財政政策を活用する際に大きな問題となるのは、政府が抱える莫大な債務残高だ。10月の消費増税は短期的に見ると景気の押し下げ要因になり、状況次第では再び拡張的な財政政策のニーズが高まる可能性もある。だが、増税する一方で支出を増やしていては、財政問題は一向に改善しない。

解決策の1つとして2016年ごろに活発に議論されたのが、景気対策として財政政策の財源を中央銀行の貨幣発行に頼る「ヘリコプターマネー」だ。主な提唱者に英金融サービス機構元長官のアデア・ターナー氏がおり、日本でも多くのエコノミストが注目した。

通常の財政政策では、財政支出の財源を一時的に国債で確保しても、いつかは増税して税金で賄わなければならない。ヘリコプターマネーの場合、中央銀行と政府が一体になった「統合政府」としてその財源を貨幣の発行で賄うため、直接国民から税金を徴収する必要がない。