有料会員限定

想定通りに進まなかった波瀾万丈の半生記 ソニー シニアアドバイザー 平井一夫

拡大
縮小

ソニーを立て直した名経営者は、会長に退いてからたったの1年で会社を去った。その思いとは? 想定通りには進まなかった半生を振り返る。

相手の役職にかかわらずカジュアルに接するのが平井流。普段はポロシャツで出社することもある(撮影:尾形文繁)

ソニー会長に退いてからわずか1年。あっさりとビジネスの世界から身を引いた。

シニアアドバイザーという肩書だが、積極的に関わるつもりはない。力を合わせて事業立て直しに奔走した後任社長の吉田憲一郎にソニーのことはすべて託した。邪魔をしたくはない。今後も「可能な限り、出社しない」考えだ。

ソニーでやり残したことはないのか。こう尋ねると「やり切ったとは言えないが身を引くことが重要」と話した。

「長期政権になると周りはトップの癖を知っているから、意思決定を先回りするようになる。そうなると社長はオートパイロット(自動操縦)。組織の緊張感がなくなり、あっという間に機能不全に堕ちていく」

過去最高益を出した18年3月期を最後に、平井は社長から会長に退いた。「次の任期を引き受ければ確実にオートパイロットになる。すでにその兆候はあったので」。

自分自身の存在が、12万人の社員を抱える巨大企業にとってマイナスになるかもしれない。組織としての力を最大限引き出すには、ともにソニー再建に取り組んできた有能な仲間に引き継ぐべきだ。「そうしなければ、優秀な人たちが社長になる機会を奪ってしまう」。これが平井の考えである。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内