いでざわ・たけし 1973年生まれ。1996年早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日生命保険入社。2002年にオン・ザ・エッヂ入社、2007年ライブドア(現NHNテコラス)社長に就任し経営再建に従事。2015年4月から現職。(撮影:今井康一)
(注)本記事は週刊東洋経済8月3日号「LINEの岐路」掲載インタビュー(95ページ)に大幅加筆した拡大版です。

 

──「第2の創業」という言葉を強調しています。

メッセンジャーサービスを入り口としたポータル(玄関)な存在になりたいということは、2014年から言ってきた。基本路線は当時と変わらないが、今は「金融」と「オフライン」という新たなビジネスチャンスが生まれている。攻めるべき領域がここに来て一気に広がっていることが、第2の創業という文言を対外的に打ち出している理由の1つだ。

もう1つは、社内に向けたメッセージが大きい。LINEアプリが誕生してから8年が経ち事業が多角化している中で、新しいリーダーを育てていったり、外から取り込んでいったりする必要が生まれている。そこで今年度から、グループに貢献した役職員に対し、3年間合計で約10.8%相当のストックオプションまたはその他の株式報酬を発行することにした(注:取締役に対しても通常の報酬とは別に、80億円を上限とするストックオプション付与の枠を新たに設定)。

同時に、今年2月からはカンパニー制を導入し、各カンパニーにCEOを置く仕組みにした。そこで生まれたリーダーが、既存のメッセンジャーサービスに肩を並べるようなサービスをつくる、という姿を期待している。

──2019年12月期はLINEペイへの投資がかさみ、大幅な営業赤字に転落する見通しです。

月間利用者を8000万人抱えるプラットフォームは、日本でほかに存在しない。ただ、このポテンシャルをもっと生かさなければならない。これまで順調に成長してきたが、もう一段の成長が必要なフェーズに入っている。LINEの中にはいろいろなサービスがある。もちろん利用者の許諾を受けながらだが、そのデータを分析して、利用者ごとに適切な形で広告を出せるという点もさらに追求したい。

──一方で、広告事業の広げ方、広告の出し方は非常に慎重に行っているように見えます。

毎日使っている利用者が多いのがLINEの最大の価値だ。だから、利用者の嫌がることを強制的にやっていくようなことはしない。そこはかなり配慮してやっていて、何か新しい機能を入れるときもABテストをしたり、事後のアンケートをしたり、必ずその結果を見ながら改善を行っている。利用者が心地良いと思える場所にしなければならないというのがベースの考え方。事業としての成長はそれと両立させるべきだし、バランスは取れると思っている。

──直近の決算でも、広告事業がLINEの収入全体の過半を占めます。1本足打法とも取れる現状に不安はないでしょうか。

収益の構成について、もっとこうするべきというような「べき論」を持っているわけではない。理想をいえば、いろいろな事業が伸びている状態がいちばんいいのかもしれないし、3本、4本足打法のほうが望ましいかもしれない。ただ、今いろいろな新規事業に挑戦する中で、マネタイズの時間軸がそれぞれ違ってくるのは当然かなと。短期で収益が出そうなものがあれば、中長期で大きく期待をかけられそうなものもある。両面を見ていきたい。

──これまで露出の少なかった慎ジュンホ氏が4月に代表取締役となり、6月のLINEカンファレンスでは基調講演も行いました。これはどんな意図がありますか。

LINEがプロダクトの会社である、ということを再確認するためだ。慎はLINEの生みの親であり、ゼロからイチを作り出す能力がある。だからCWO(Cheif WOW Officer)という役職にも就いている。グローバルでグループ7400人が働く規模になり、社員がプロダクトにかける熱意の濃度が低くなってきていることに危機感を覚えている。慎が表舞台に立つことで、わが社はプロダクトにかける会社だ、ということを社内外に伝える必要があると考えている。