パリ協定を機に世界で気候変動対策が進む。日本でも毎年猛暑や豪雨などの自然災害が頻発し、気候変動が目前に迫った危機に感じられるようになった。対策の切り札として注目されるのが、カーボンプライシング(CP)だ。

CPは二酸化炭素に価格をつけ、排出削減を目指す政策手法だ。これまで市場の論理の外にあった気候変動の問題を、市場の内部に取り入れている。排出される二酸化炭素に課税する炭素税方式と、排出量をやり取りする市場をつくり出す排出量取引がある。

脱炭素社会の実現にとってCPが重要である理由は大きく2つだ。第1に二酸化炭素に値段をつけることで、排出を抑制できること。第2にその排出抑制を、より低い費用で達成できるということだ。市場メカニズムを利用するため、社会全体での削減費用を最小限に抑えることが可能である。とくに後者の視点がポイントになる。

科学技術や生活に変化

CPが導入されるとさまざまなエネルギーや価値観などの転換が期待できる。例えば主要な燃料は従来の石炭から、炭素含有量が約半分の天然ガスへと移行するだろう。欧州や米国北東部では実際に、排出量取引導入と同時に天然ガスによる発電が増えた。また炭素税などが上乗せされることで電気代や燃料費が上昇するため、エネルギー消費を減らそうという意識が高まり、省エネ促進が期待される。企業は新しい設備の導入に取り組み、一般家庭でも省エネ型の家電への買い替えが進むだろう。東京都では排出量取引導入以降、省エネ設備の導入が大幅に増えている。

交通手段の選択にも効果を生む。ガソリン代が上昇すると、マイカーより電車、バスなどの公共交通手段を利用する人が増えるからだ。電気や水素などを利用した自動車の普及も期待できる。発電エネルギーの脱炭素化も起こるはずだ。化石燃料を使った電源の価格が上昇するため、太陽光や風力発電の競争力が上がり、再生可能エネルギーの普及が一層増すのだ。