野村不動産が2008年に開発した「PMO」ブランド第1号物件。中小オフィスビルのイメージを変えた先駆的ビルだ(提供:野村不動産)

日本を代表するビジネス街の東京・大手町や丸の内を中心に、数多の高層ビルを抱える業界最大手の三菱地所。同社は今年1月、10階建て前後のオフィスビル「CIRCLES」を新たに展開すると発表した。都心部を中心に今後5年間で計30棟の開発を進める計画で、第1弾として銀座や汐留、日本橋馬喰町で建設中だ。

ワンフロアの面積が1000坪を超えるオフィスビルもざらの三菱地所にあって、CIRCLESのそれは30〜100坪程度。あえてそんな中小規模のオフィスビル開発に乗り出すのには理由がある。「中小企業やスタートアップ向けの受け皿をつくりたい」(都市開発一部の竹山晃平氏)。

新築ニーズが増大

都心を中心に、雨後のたけのこのごとく立ち上がる高層ビル。その陰に隠れがちだが、多くのデベロッパーが今、中小オフィスビルに熱い視線を注いでいる。シェアオフィスやマンションの一室が手狭になったスタートアップ企業などを中心に、もっと広くて設備も整ったオフィスビルに入居したいというニーズが高まっているからだ。

長らく不動産業界では、中小オフィスビルはいわば「忘れられた」存在だった。直近の供給ラッシュはバブル景気に沸いた1990年前後にまでさかのぼる。当時は不動産投資が大ブームとなり、ビル賃貸業とは無縁の企業や個人資産家も中小オフィスビル建設に資金を投じた。

ところが、バブル崩壊後は一転して新規のビル開発がストップ。しばらくして不動産市況が持ち直すと、首都圏で多くの大規模再開発が動き始めたものの、中小規模のオフィスビルは後回しにされた。その結果、23区内でも小ぶりなビルは築古の物件ばかりになり、借りる側の選択肢は限られた。