会社提案の取締役選任議案のうち、昨年の選任が裁判で無効とされた3人の社外取締役は、賛成率が73%台にとどまった。

創業家会長追放劇の余波がいまだ収まらない精密ばね大手のアドバネクス。6月25日に開かれた定時株主総会で、株主の怒りの声が噴出した。前編に続いて独自取材で判明した総会でのやりとりを再現する。(事の発端となった昨年の株主総会は投資家、株主総会担当者必読の1万字詳報 前代未聞の騒動!「アドバネクス事件」全構図

質問に立った株主の中で最も印象的だったのは、2代目社長・加藤清氏(故人)の娘で、加藤雄一元会長の妹だった。昨年のアドバネクスの定時株主総会では、取締役全員の再任を提案する会社提案に対し、4人の取締役交代を提案する修正動議が決議され、創業家出身の加藤雄一会長は事実上解任された。同じ創業家出身として女性は、柴野恒雄社長に対し切々と思いを訴えた。(発言者の敬称は略、発言への記者解説は青囲みで表示)。

「恩人を裏切った社長を許せない」

女性 アドバネクスは私の祖父・加藤伊之吉、父・清、兄・雄一と3代にわたって経営を受け継いできました。両親が新婚の頃はまだ町工場で、父も母もリュックにばねを詰めて電車でお得意様歩きをしたと聞いております。

父は亡くなりましたが、90歳になる母は会社の現状に胸を痛め、この1年はとても辛い思いをしております。父の時代に将来の雇用を考えて柏崎に新工場(現在の新潟工場)を建設しましたが、大きなリスクがあり、会社中から大反対を受けたと聞いております。その決断が今日まで会社が大きくなった原動力の1つだと思います。

皮肉にもその工場長だった柴野社長を見出したのが(兄の)加藤雄一で、その恩人を裏切った柴野社長を私は許せません。父は6年前に亡くなりましたが、その直前の株主総会にどうしても出席したいと言って、酸素ボンベで酸素を吸いながら出席し、本当に満足して帰りました。その病床に柴野社長が来て、「今度、雄一社長の後任として社長になった柴野です」と誠実そうに挨拶をしていた光景を、今でも思い出します。

その時、父はアドバイスして「雄一と頑張ってやりなさい」と応援しておりました。加藤雄一は、父の後継者として入社してから、いち早く海外の工場展開を推進して会社の規模を大きくしました。国内の景気に左右されにくい体質を築いた功労者だと思っております。昨年までは会長として、土日も返上して仕事に取り組んでいる日々が続いておりました。アドバネクスは父と兄が命を削って経営した会社です。

柴野さんが裏切った背景に、株式会社アサダの朝田英太郎社長の存在があります。朝田さんは株主名簿の筆頭にあるAAA株式会社を含め、上位にある何社もの実質上のオーナーだそうですが、実は朝田さんのお父様はアドバネクスに材料を納めていただいているアサダの社長として父・清の大親友で、ゴルフやマージャンをいつも一緒にしておりました。

そのお父様が早く亡くなられたので、息子の英太郎社長を「英ちゃん」と呼んで、私の両親が公私ともに可愛がっていた記憶がございます。その恩があるはずの加藤家を裏切り、株を買い占めて、アドバネクスの柴野社長、大野(俊也)常務に協力させて兄・雄一を追い出したことが人間として許せません。

父は晩年、本当に兄の経営に満足し「何も心配していない」と何度も嬉しそうに私たちに話しておりました。この1年の業績の悪化に社長としてどう思っているのか。また、自分を社長に抜擢してくれた前会長の兄(加藤雄一氏)に、どうしてこのようなことが人間としてできるのかお答えください。