正規ディーラー運営のBMW中古車販売店では、普通の中古車に交じり、新車同然の車が売られている(写真は本文と直接の関係はありません)

BMWと言えば、日本でも高い知名度を誇り、多くの消費者が憧れるドイツの高級車ブランドだ。その国内販売ディーラーの店頭で今、大量の新車が中古車として売られている。

首都圏のある正規ディーラーが、新車販売店とは別の場所で運営するBMW中古車販売店。展示車の1台、セダン「320i」の商品説明パネルに目をやると、中古車のはずなのに、走行距離欄に記された数値は50キロメートルにすぎない。この1台だけでなく、全展示車32台のうち、9台は判を押したように「走行距離50キロメートル」と書かれていた。

この9台はすべて、業界で「新古車」と呼ばれる新車同然の未使用車だ。セダン、クーペ、SUVなど車種はバラバラだが、どれもBMWの最新現行モデル。それでいて販売価格は新車の定価より2割前後安い。

新古車とは、本来は売る側であるはずのディーラー自身が名義人(購入者)になって新車登録し、未使用またはそれに近い状態で販売する車のこと。ナンバーを取得済みなので、あくまで中古車として扱われる。

販売員があけっぴろげにこんな内情を説明した。「半期末や年度末などが近づくと、BMWジャパンから『30台買ってくれ』とか依頼が来て、断われないんですよ。だから新車としてさばけない分は、店が新車登録してから中古車扱いで売っているんです」。

別の正規ディーラーが運営する都内の中古車販売店でも、複数台のBMW新古車が売られていた。中には昨年発売されたばかりのコンパクトSUV「X2」もある。走行距離はわずか20キロメートル。輸送途中に多少は自走させるので、新車でも店頭引き渡し時の走行距離はこれくらいだ。車両価格は461万円(税抜き)で、同じ装備の新車に比べて約140万円安い。

車を眺めていると、販売員が笑顔で話しかけてきた。「このX2は、登録済みなのとオプションが選べない点を除けば、新車と何ら変わりません。ドイツの工場から千葉の港に着いたばかりの新車を店まで運んできたんですから」。

新古車生む販売ノルマ

状態は新車同然なのに、中古車として店頭に並ぶBMWの高級車。こうした光景は、この2店に限った話ではない。

中古車情報サイト「カーセンサーnet」で、走行距離100キロメートル未満の中古車として販売されている車を検索すると、大量のBMW車がヒットする。7月1日時点での該当車は849台に上り、大半は2018~19年式の現行モデルだ。取扱店のほとんどはBMWの正規ディーラーで、その所在地も北海道から九州まで全国にわたる。

別の高級輸入車も同じ条件で検索すると、独メルセデス・ベンツは99台、独アウディは6台。これが日本車になると数が飛躍的に増え、トヨタ自動車が4397台、ホンダは2767台だ。新古車の場合、ブランドによって、情報サイトの利用の仕方は大きく異なる。それでも、国内新車販売台数とのバランスで考えれば、BMWの多さは際立っている。

こうした新古車が大量に流通する背景には、BMWの日本法人、ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン)がディーラーに課した厳しいノルマがある。

取材で入手した内部資料を見ると、同社は19年の国内新車販売目標を5.9万~6.2万台とし、うち1.2万~1.5万台は「政策(自社・本誌注)登録分」(下写真)と記されている。つまり、最初から台数の20~25%はディーラーに自社登録させる前提で販売計画を立てているのだ。

BMWジャパンの内部資料には、自社登録の生々しい実態が記されている。今年も1万数千台はディーラーが自社登録する前提だ

関係者らによると、前年の18年もBMWジャパンは当初6万台近い販売目標を設定。しかし、実際は5万台強に終わり、結果的に自社登録分が新車販売台数の約3割を占めたという。