週刊東洋経済 2019年7/20号
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「公的年金だけでは老後に2000万円不足する」。6月3日に公表された金融庁金融審議会の報告書が波紋を広げている。将来に不安を感じ、収入を維持するために長く働き続けたいと考える人も少なくないだろう。

そのための手段として、副業や資格取得・学び直しが脚光を浴びている。なぜか。

長く働くための手段として、一般的なのは再雇用だ。すでに国は高年齢者雇用安定法で、企業に65歳までの雇用機会確保を義務づけている。ただ66歳以上のシニア人材の雇用については、現状では大企業の約2割しか制度を導入していない。そこで国は企業に70歳までの雇用機会確保の努力を課す方針を掲げ、義務化も視野に入れる。

しかし、企業にシニア雇用を促しても、戦力として活用できるかは別問題だ。経団連の調べによると、高齢社員の再雇用の際、モチベーション低下やポスト不足といった課題が生じる。

「定年後の再雇用は年金支給までの空白期間を埋めるもの。企業は本音ではやりたくないはず」。ある大手企業OBはそう語る。「同僚の大半が再雇用を選んだが、パソコンの前に座るだけで、やることがないと嘆いている」(同)。

シニア雇用を推進も活用できない企業多数

働きたいシニアと、その能力をうまく活用できない企業のミスマッチが起こる背景には、「日本の労働市場の根本的な問題がある」と、日本総合研究所の安井洋輔主任研究員は言う。

「多くのシニア人材には長い経験に裏付けられたスキルがある。ただ日本企業の多くは今も職務や勤務地が限定されない『無限定正社員』を多く抱え、特定のスキルを生かせる仕事を切り出して募集していない。そのシワ寄せがシニア人材に及んでいる」(安井氏)

シニアを積極的に活用しようとする企業がないわけではない。

森田民哉氏(60)は昨年末、電子部品メーカーを定年退職。今は人材派遣大手のパソナグループで新入社員として働く。同社は今春、60歳以上の「エルダー社員」を80人採用。森田氏もその一人だ。