世界の覇権が一気に変わる サイバー完全兵器(デービッド・サンガー 著/高取芳彦 訳/朝日新聞出版/2300円+税/512ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
【著者プロフィル】David E. Sanger/米ニューヨーク・タイムズ記者で、国家安全保障担当。著書に『The Inheritance』『Confront and Conceal』など。取材チームでピュリッツァー賞を3度受賞。ハーバード大学ケネディ行政大学院で教鞭も執る。

インターネット上で起こる国家間の「サイバー紛争」。その引き金を最初に引いたのは米国だ。ジョージ・W・ブッシュ大統領の許可の下、米国家安全保障局(NSA)とイスラエルのサイバー戦部隊により、「オリンピック・ゲームズ作戦」と呼ばれる作戦が実行された。その作戦では、イランの地下核施設に「スタックスネット」と呼ばれるコードを送り、ウラン濃縮に使う遠心分離機を制御不能にして爆発させた。空軍が爆撃すると戦争状態に突入する可能性が高いが、サイバー攻撃は隠密性が高く、犯人の特定が難しい。そのためシラを切りやすく、実に使い勝手がよい兵器といえる。米国が誘惑に駆られたのもわかる話だ。だが、その選択が自国を苦しめる。世界中の国々が米国に追随したからだ。

本書では各国のサイバー攻撃の実態が明かされる。特に高いサイバー攻撃能力を持つ国として挙げられたのが、中国、ロシア、北朝鮮だ。独裁国家は当初、人々が素早く情報を共有するインターネットを脅威として受け止めていた。しかし、使い方次第で独裁権力を強化し、民主主義の力を弱めることができると気づいていく。