イラスト:髙栁浩太郎

繰り上げ受給および繰り下げ受給により公的年金の給付額が増減することは、前記事で説明したとおりだ。

ただし、増減する年金額は、あくまで名目(額面)上のものだ。老齢基礎年金および老齢厚生年金の給付額からは、税および社会保険料が控除されるが、これらは原則として年金額が増えるほど負担額も大きくなる傾向にある。

公的年金は、前述のとおり長生きリスク(厳密には「長生きに伴う資産枯渇リスク」)に備える保険であり、損得計算は本来なじまない。しかし、本稿ではあえて、公的年金の繰り上げ受給・繰り下げ受給の効果を定量的に明示するため、税・社会保険料控除後の「手取り額」ベースにより比較検証してみよう。

「手取り額」算出の前提は居住地や扶養人数で変わる

今回の手取り額の算出では、税(所得税・住民税)および社会保険料(国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料)のみを考慮している。このうちとくに注意すべきは、住民税と各種の社会保険料である。所得税は居住地にかかわらず全国一律のルールで算出可能なのに対し、住民税および社会保険料は、居住地や扶養家族の有無によって大きく異なるからだ。

また、手取り額は一定不変ではない。適用される社会保険制度が年齢によって変わるほか、社会保険料の算出方法も毎年あるいは2~3年置きに変更されるからだ。さらに、扶養人数の変動も手取り額に影響する。