「働く」ことについての本当に大切なこと
「働く」ことについての本当に大切なこと(古野庸一 著/白桃書房/2315円+税/280ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
ふるの・よういち●1987年、リクルートに入社。キャリア開発に関する事業創造、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画。リクルートワークス研究所でリーダーシップ開発などに従事。2009年からリクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所所長。

お金、生きがい、貢献…、働く理由を考えてみよう

評者 北海道大学大学院教授 橋本 努

「もし一生楽に生活できるだけのお金がたまったとしたら、あなたはずっと働きますか、それとも働くのをやめますか」(日本人の国民性調査)

過去40年間、日本人の6割以上はこの質問に対して「働く」と答えてきた。お金が十分にあっても働きたい。結構多くの人がそう思っている。別の調査で「働く理由」を尋ねると、「お金を得るため」と答える日本人は約5割。残りは「生きがいを見つけるため」「社会の一員として務めを果たすため」「自分の才能や能力を発揮するため」と答えている。回答の傾向は過去15年間、変化していないようである。

お金以外のために働きたい。そう思う日本人が多い一方で、「やりがいのある仕事」は減ってきた。内閣府の調査によると、「仕事のやりがい」が満たされている人の割合は、1980年代前半の30%台から、2005年には16.6%にまで落ち込んでいる。

やりがいのある仕事を見つけたい。そうした関心に応じるべく、著者は診断方法(リクルート・キャリア・アセスメント・プログラム)を開発した。「職場環境」「仕事の仕方」「キャリア志向」の3つの視点から、各人に合った仕事を提案する仕組みだ。

こうした診断方法で自分に合う仕事が見つかるとして、ではその仕事は「やりがい」を与えてくれるのかどうか。それが問題である。

仕事には3つの種類がある。「ジョブ(単なる仕事)」「キャリア(地位形成に資する仕事)」「コーリング(天職)」である。自分の仕事を「コーリング」とみなしている人は、満足度と健康度が高いことが分かっている。

だがコーリングが見つからない人は、どう生きていくべきなのか。一方には、配属された職場環境に過剰適応して、競争で生き残ることに情熱を傾けている人がいる。他方には、職場での出世レースに乗らず、職場以外での幸せな生活を優先する人たちがいる。

本書はこの「生き残り」と「幸せ」の両方が重要との立場から、仕事をめぐる哲学や心理学の広範な成果を平易に語り説く。「なぜ働くのか?」普段は漠然と疑問に思いながらも、なかなか真剣に考えることのないこの本来的な問題をストレートに論じた点に、本書の魅力はある。

最後はコーリングよりもキャリア形成に目を向け直す。社員たちが自分らしく働きつつ、ありのままの自分を受け入れるのに資するような職場環境の提案は示唆に富む。