【今週の眼】藤森克彦 日本福祉大学 福祉経営学部教授
ふじもり・かつひこ●1965年生まれ。長野県出身。国際基督教大学教養学部卒業。同大学大学院行政学研究科修士課程修了。日本福祉大学にて博士号(社会福祉学)取得。2017年から現職。みずほ情報総研主席研究員も務める。専門は社会保障政策。著書に『単身急増社会の希望』など。(撮影:尾形文繁)

公的年金保険は、何のためにあるのか。大学の講義でこのテーマを考えるとき、公的年金保険が存在せず、現役時代からの貯蓄だけで老後に備えることを想定してみる。例えば、65歳で退職し、老後の生活費を月15万円と設定した場合、どれほどの貯蓄が必要か。その際、「一般論ではなく、あなた自身が必要とする貯蓄額を計算してほしい」と注文をつけると、学生は戸惑い始める。何歳まで生きるか予想できないため、貯蓄額を計算できないのだ。家や車を買うのとは話が違う。

ここに、公的年金保険の重要な意義がある。この年金は、個々人の長生きのリスクに対応した保険であり、死亡時まで年金給付が保証されている。もしこれがなかったら、75歳まで生きることを想定して貯蓄した人が85歳まで生きた場合、老後の生活費が10年分不足してしまう。人生100年時代では、公的年金保険があるからこそ、「将来長生きをしても大丈夫」という安心感を持つことができる。