きうち・たかひで●1987年から野村総合研究所所属。日本経済の分析、ドイツ、米国で欧米の経済分析を担当。2004年野村証券に転籍、07年経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年7月から17年7月まで日本銀行政策委員会審議委員、この間独自の視点で提案を行う。17年7月から現職。(撮影:尾形文繁)

米中貿易戦争が熾烈となり米国経済を取り巻く環境が悪化する中、FRB(米連邦準備制度理事会)が年内に利下げに動くとの観測が市場で強まっている。加えて、FRBが議論を進めている金融政策の枠組み見直しの帰趨も大きな関心事となってきた。枠組みが大きくハト派の方向に見直されると、この先、予想以上に積極的な金融緩和策が実施される可能性が出てくるとの期待からだ。

6月4〜5日にはシカゴで会合が開かれ、見直し議論がいよいよ本格化してきた。見直しの最大の目的は、予想物価上昇率(インフレ期待)を高めることを通じて、次の景気後退時にも金融政策の有効性を維持することにある。現在の景気回復局面でPCEコア(個人支出関連)の物価上昇率は平均1.6%と、FRBの物価目標2%を下回っている。その結果、同様に2%を下回るとみられる予想物価上昇率が、この先さらに下振れすれば、景気後退時に政策金利をゼロまで引き下げても、実質政策金利(名目政策金利から予想物価上昇率を差し引いたもの)が十分に低下せず、金融政策の景気浮揚効果が限られてしまう。また、政策金利ゼロの状態が長期化し、いわゆる「日本化」のリスクも生じる。