(イラスト:谷山彩子)

人材教育の世界でよく知られる映像素材に『紳竜の研究』という伝説的なDVDがあります。これは当時キャリアの絶頂期にあった島田紳助さんが、吉本興業の若手に向けて行った「漫才の戦略」に関する講義を収録したものです。この映像を見ると、島田紳助という人が、いかに戦略的に自分の漫才を組み立てていたかがわかります。

おそらく多くの人は、お笑いの世界で成功する人には天性の「お笑いのセンス」があると思っているのではないでしょうか。生まれつき人を笑わせるセンスを持っている人が、自然に「素の自分」を出すことで笑いを取っている、という考え方です。しかし、島田紳助さんはそのような考え方を全否定しています。理由は「そんなことやってたまたま売れたとしても一発屋で終わるだけ」だからです。

漫才の世界で生き残るためには戦略が必要です。紳助さんは、「漫才の戦略」をつくることに専心します。具体的には、まず「漫才のパターン」を整理したんですね。長く活躍している漫才師の漫才をとにかくたくさん見る、聴く、ということをやったわけです。おそらく読者の方も、「それくらいならやるよ」と思っているのではないでしょうか。そう、違うのはここから先なんです。紳助さんは、そうやってたくさん見た漫才を、すべて文字に書き起こしたうえで「面白さの構造」を分析していくんですね。紳助さんは後輩にこう諭します。「面白い漫才を録画して見る、テープにとって聴くとかみんなもやってるでしょ。そんなの何遍やっても何もわからんわ。紙に書くの。ものすごい時間かかるけど全部紙に書き出す。それで毎晩寝るときに何が違うんやろって考えるの。そうするといろいろとわかってくる」。