(撮影:風間仁一郎)

記者会見の席上などで、豊田章男は常々こう語っている。

「石にかじりついてでも、300万台を守りたい」

「300万台」とは、トヨタ自動車(単体)の年間国内生産台数の目標値だ。その目標値を、「石にかじりついてでも」守るというのは、どういうことか。

自動車産業は、資材の調達をはじめ、製造、販売、整備、運送など、広範囲にわたる関連産業を持つ総合産業だ。日本自動車工業会の調べによると、その就業人口は539万人に上る。わが国の全就業人口は6530万人だから、およそ8.2%に当たる。文字どおり、日本経済を支えている。

トヨタ単体の国内生産台数は2018年に約313万台と、国内で生産される自動車全体の約3割を占める。ということは、ざっくりと見積もって就業人口のおよそ3割、すなわち160万人前後の雇用を担っている、といっていい。トヨタは、彼らの生活を支える重い役割を担っているのだ。

取引があるサプライヤーの多くは、トヨタの国内生産台数300万台を採算ラインに置いている。つまり、300万台を生産しないことには、サプライヤーは国内の生産拠点や雇用を維持できない。

加えて、研究開発や生産技術を含むモノづくりの競争力を維持するにも、トヨタは、最低限300万台の生産台数が必要だとする。

「300万台」は、トヨタの社会的「公約」といっていい。だからこそ、「石にかじりついてでも」と、章男は、己に決意を言い聞かせるように述べるのだ。日本のモノづくりの責任を一身に背負う覚悟の言葉だ。もっというならば、それこそ日本を背負う重い言葉である。