週刊東洋経済 2019年6/22号
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首都圏の地方銀行を昨年に退職した30代の男性は、「銀行の掲げる目標は『顧客本位』。そうはいっても銀行は一定の収益を上げていく必要がある。顧客の利益と相反することも多かった」と振り返る。これは金融商品の販売や貸し出しなど、営業ノルマを背負った多くの銀行員の偽らざる本音だろう。男性はノルマありきとならないよう、「顧客のメリットと銀行のメリットが重なる部分をできるだけ大きくすること」をつねに意識したという。

金融庁が企業からヒアリングをすると、「ノルマ達成のために担当者が頻繁に訪問してくる」「支店の業績のため、期末に資金需要に基づかない短期間の借り入れをするよう求められた」といった、銀行都合の営業に対する不満が多数出てくる。かつて日本経済が右肩上がりだったとき、そうした不満は少なかったはずだ。事業を拡大したい企業に銀行が融資すれば成長に直結するし、それが銀行の収益にもつながったからだ。

だが、高成長時代はとうの昔。経済が成熟して資金需要が低迷すると、銀行と顧客のウィンウィンの関係は崩れた。銀行が「貸し出しを増やすこと」で収益を上げるモデルにこだわり続けると、ノルマ達成を求められる現場の負担がおのずと増す。

横並びで単純な量的拡大競争に集中するような銀行のビジネスモデルは限界に近づいている──。

金融庁は近年、こう警鐘を鳴らし、「顧客本位の業務運営」の重要性を繰り返し訴えてきた。しかし、量の拡大競争が染み付いた銀行に路線転換は難しい。結局、金利競争を繰り広げて体力をすり減らす。昨年9月、金融庁は行政方針の中で、地銀の過半数の54行で本業利益(貸し出しと手数料ビジネスの合計収益)が赤字になっており、「2期以上の連続赤字となっている銀行数が年々増加している」と警鐘を鳴らした(記事下図1)。

将来有望な若手がメガからベンチャーへ