暴君:新左翼・松崎明に支配されたJR秘史
暴君:新左翼・松崎明に支配されたJR秘史(牧 久 著/小学館/2000円+税/476ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
まき・ひさし●1941年生まれ。64年日本経済新聞社入社、東京本社編集局社会部に所属。東京・社会部長、副社長、テレビ大阪会長を歴任。現在、ジャーナリスト。著書に『「安南王国」の夢』『不屈の春雷──十河信二とその時代』『昭和解体──国鉄分割・民営化30年目の真実』など。

JR各社の命運を分けた、経営者の覚悟の違い

評者 甲南女子大学教授 林 雅彦

評者は、学生時代、各クラブへの活動援助費を学生自治会がピンハネしないための監視役を一時していた。ある日、自治会の主要メンバー3人が中核派に殺されてしまった。そう、3人は極左過激派組織「日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(革マル派)」の活動家だった。

本書は、動労(動力車労働組合、旧国鉄の労組の1つ)を拠点とした革マル派の最高指導者、松崎明の一代記かつ、旧国鉄及びJR各社の労働組合史だ。内容の多くは目新しくはないが、1冊にまとまると、その迫力に圧倒される。

松崎明といえば、「コペ転」。コペルニクス的転回の略で、国鉄改革の際、松崎率いる動労が突如反対から賛成に回ったことを指す。これが分割民営化実現に大きく寄与した。

政府、JRに恩を売った松崎は、国労以外の旧国鉄の労組を糾合したJR総連を支配、また、JR各社のみならず政界や警察の一部にまで取り入ることに成功する。

こんな話もあった。2003年、JR総連は組合事務所への警察の捜査が不当労働行為に当たると、国際労働機関(ILO)に提訴した。当時、在外公館でJR総連が過激派支配下にあることをILOに説明していた評者は、JR総連から公文書偽造容疑で告発を受けた(当然不起訴)。この時、あたかもJR総連の代弁者であるかのように政府を厳しく批判したのが枝野幸男衆議院議員。国会質問だけではなく警察庁や厚生労働省担当官への叱責にまで及んだ。

革マル派の浸透を組織力だけでは説明できない。大きな要因は、JR経営陣が分割民営化後も松崎=JR総連を会社統治に利用したことだ。便利だが副作用がきついのは、総会屋と同じ。JR東海とJR西日本は、早期に革マル派の影響を排除したが、JR東日本は約30年を要した。

革マル派は非公然組織を擁し、スキャンダル、家族までも利用する反社会的組織である。東日本ではお目付け役として送り込まれた警察官僚OBが脅迫に屈したことが本書では示唆されている。一方、東海、西日本では経営陣が一体となり排除の意思を固め、非合法的な攻勢にも屈しなかったことが大きい。

現在の組織人にも教訓となる話だが、経営者といっても一般の市民がどこまで体を張れるか。東に比べ西の方が革マル派の影響力が弱かったというのも事実なのだ。昨今、総会屋、過激派とも現実味は薄い。が、会社を壟断(ろうだん)しようとするのは彼らだけではない。