(撮影:今井康一)

「復旧は現場で即決、即実行でいい。責任はすべて私が取る」

2011年3月11日、東日本大震災が発生すると、豊田章男は直ちに緊急通達を出した。

「現場が自分の目で見て、いちばんいいと思うことをやってほしい。必要だと思ったら、その場で決めていい。即断、即決、即実行で復旧に取り組んでもらいたい。責任はすべて私が取る」

一見、この通達は、トップであれば誰でも言えそうに思える。しかし、「責任はすべて私が取る」というせりふは、そうとは限らない。いや、仮に言えたとしても、その発言がどこまでリアリティーを持って伝わるかは疑問だろう。

その点、章男の場合は、公聴会での実績がある。彼は、自ら大規模リコール問題の責任を取って謝罪した。「責任はすべて私が取る」というのが、うそ偽りでないことは明らかだ。彼の言葉には重みがあった。

公聴会を機に、章男は、トヨタ自動車の最終責任者としての自覚を強め、強力なリーダーシップを発揮するようになった。一方で、トヨタの組織は、大きな課題を抱えたままだった。

トヨタはもともと、徹底した現場主義をとる。問題が起きれば、即座に現場が対応する。それが、トヨタの強みだ。

しかし、08年のリーマンショックによる赤字転落や、09年から10年にかけての大規模リコール問題を見ればわかるとおり、会社が大きくなるにつれ、業務執行が追いつかなくなっていた。