グーグルが消える日 Life after Google
グーグルが消える日 Life after Google(ジョージ・ギルダー 著/武田玲子 訳/SBクリエイティブ/1800円+税/403ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
George Gilder●1939年生まれ。ハーバード大学卒業後、リチャード・ニクソン、ネルソン・ロックフェラーなどのスピーチライターを経て、サプライサイド経済学の研究者へ転身。通信網の帯域幅に関するギルダーの法則を提唱。著書に『富と貧困』『テレビの消える日』『テレコズム』。

挑戦的な予測だが、明確さ欠く“消える”理由

評者 スクウェイブ社長 黒須 豊

本書は、アルビン・トフラー亡き後、最も注目される米国の未来学者の一人が著した意欲作である。

本書のコア概念は、挑戦的な書名が示すとおり、今日のグーグルのビジネスモデルは永続的ではなく、ユーザーに対する巧妙な無料戦略が無効になるだろうという予測だ。

著者は、クロード・シャノンの情報理論によって新たな科学が確立し、これに基づく経済が生まれ、その経済における「世界システム」、つまり世界を圧倒的に支配する普遍的な仕組みを初めて完成させた企業がグーグルだとする。

そのシステムは、グーグルが自ら命名したクラウド・コンピューティングが概念として有名だが、致命的な欠陥が存在する。そのため、将来はこれに取って代わる概念であるスカイ・コンピューティング時代が来るというのが著者の見立てだ。

前者は大量データの集中処理を前提とし、ユーザーに対するサービスは原則無料で提供する。哲学的には、限界費用ゼロ社会の実現を目指している。それは、広告収入に依存するモデルで、ユーザーは見たくもない広告を見るために時間を浪費することになる。

後者は、ブロック・チェーン等の分散処理を前提とし、ユーザーに対するサービスは必ずしも無料とはならない。有料ならば広告主の意向を最大限尊重する必要はなく、ユーザーは広告を見る時間を節約できる。

著者は、一種のパラダイムシフトにより、グーグルの無料モデルに限界が来ることは明らかだという立場を取る。

予測の信憑性を検討するためにも、スカイ・コンピューティングの具体像の描出を期待したのだが、後半は米国の通信規制問題などに費やされ、肩透かしを食ってしまった。

具体像はなくとも、次のような指摘は可能だ。著者は集中処理=無料、分散処理=非無料という前提を置くが、現在、クラウドの99.9%は分散環境下にある。また、ブロック・チェーンは分散データベースだが、データの計算主体は特定のデータセンター内に構築されたシステムで、その意味で集中している。

グーグルがユーザーと広告主の間で均衡を保ちつつビジネスを展開しているのは周知の事実だが、前述のように、分散、集中とグーグルのモデルとの関係は明確ではない。

それでも、著者の洞察力、取材力は素晴らしく、本書は一読に値する。グーグルがなかなか消えない理由の掘り下げがあると、なおよかった。