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丸山穂高氏の国後島での暴言と行為が持つ危険性 日ロ間の北方領土交渉を止める可能性もあった

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ビザなし交流で北方領土の国後(くなしり)島を訪れた衆議院議員・丸山穂高氏が酩酊して「戦争により北方領土を返還させることについてどう思うか」などと大騒ぎしたことが問題になっている。本件は酔っ払いの暴言では済まされない。「酩酊していたのは問題だが、北方領土問題の解決について戦争を含めて考えることを発言しただけで、ここまでたたかれるのは表現の自由を侵害するものだ」というような見解もインターネット空間では散見されるが、このような意見は間違っている。

事柄の本質を理解するためには、ビザなし交流の仕組みに関する知識が必要だ。北方領土はロシアが実効支配しているが、日本はそれを認めるわけにはいかない。北方領土はロシアによって不法占拠されているというのが日本政府の立場だ。したがって、日本のパスポート(旅券)を持ってロシアのビザ(査証)を得て、ロシアの管轄に服する形で日本国民が北方領土に渡航することを自粛してほしいという閣議了解(直近では1999年9月10日)がある。同時に人道的観点から元島民、報道関係者、国会議員、随行する外務省員や通訳などには特別の手続きで北方領土に渡航できる仕組みがある。日本人の訪問団員は、パスポートではなく身分証明書、実際にはビザではなく挿入紙によってロシアの法的管轄に服していないという体裁を整える。ロシアは身分証明書をパスポート、挿入紙をビザと見なして正規の入国手続きを行っているという立場を取る。そして、日ロ両国が互いの法的立場の矛盾を詰めないというガラス細工のような仕組みでビザなし交流が成り立っているのである。

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