種類豊富な向精神薬。依存性の高さから近年発売中止になったものもある(読売新聞/アフロ)

「あのときしっかり休暇を取っていれば、こんなことには」──。悔やんでも、もう遅い。失った時間や被った経済損失は取り戻せない。

医療機関での不適切な向精神薬処方によって、患者たちが人生を棒に振る悲劇が長年繰り返されてきた。被害者には共通点がある。仕事などの無理がたたって心身が悲鳴を上げたとき、精神科や心療内科に救いを求め、無責任な医師が安易に処方する過剰な薬を長期間飲み続けてしまったのだ。

被害者の不調の原因は、元はといえば心労や睡眠不足だった。有給休暇を消化して、心身を休めればよかったのだ。仕事がキツすぎるのなら、上司や会社に申し出ればいい。それでも駄目なら転職という選択肢もある。だが、被害者たちは「休む」という当たり前の行動を取れなかった。

このような人たちが精神科や心療内科を受診すると、すぐに「うつ病」「睡眠障害」「不安障害」などと診断されて、複数の薬を処方されるケースが極めて多い。薬物治療がすべて悪いわけではないが、働きすぎという根本原因を改めぬまま薬を飲んでも、問題は解決しない。そればかりか、漫然処方は患者を副作用で苦しめ、自然回復力を奪い、単に疲れているだけの人を「慢性疾患患者」に変えていく。

睡眠薬や抗不安薬の服用が長期化すると、患者は処方薬依存に陥る。薬を減らすと体調不良が起こるので、薬をますますやめられなくなる。その先には、薬の影響により作業能力が低下、失業し生活保護の受給を余儀なくされるなど、負の連鎖が待ち受けている。

処方薬依存の被害者は、日本では少なくとも数十万人規模で存在するとみられる。だが国も医療界も実態調査をしようとしない。そればかりか「断薬後の体調不良は薬のせいではない」などと主張し、被害を矮小化しようとしている。被害者が声を上げても無視され、裁判を起こしても現状ではまず勝てない。そのため深刻な医療被害に歯止めがかからず、社会的損失が拡大し続けている。被害者探しに苦労は要らない。私たちの周りにいくらでもいるからだ。

たった10分の診察でうつ病、パニック障害に