日本の医療体制の特徴は、「病床数が多すぎる」という点に尽きる。人口当たりの医師数は1000人当たり2.4人と、ほぼ経済協力開発機構(OECD)の平均水準である。一方、人口当たりの病床数はOECD平均の2.8倍、在院日数は同2.1倍である。これらの事実は「日本における医療の人的密度(医療密度、1床1日当たり)は、OECD平均の約4分の1」でしかないことを示す。つまり日本では、「医療密度が低い(病床数に比べて医師数が少ない)状態での長期入院が多すぎる」といえる。

通常、サービスの供給量が需要量に比べて「多すぎる」ときは、需要に見合う水準まで供給は縮小される。しかし医療の場合、長期入院を医師の判断で決められるなど、供給者である病院側の裁量により需要を調整しやすい。そのため、病院側は供給(病床・入院日数)を減らさずに済むように需要を誘発する傾向がある。つまり、「供給が多すぎるにもかかわらず、減らすインセンティブが現場に希薄である」という課題を抱える。

人口減少下において供給を減らさずに需要を誘発し、結果、需給の調整が鈍くなることは、医療サービスの持続可能性を損なう。また、持続可能でない非生産的な取り組みを続けることで、①患者は医療密度の低い環境での長期入院により、健康度や身体自立度をかえって損なう②医師当たりの担当患者数が多く医師は職能に集中できない③社会的なメリットが低いサービスに国は年15.6兆円の入院医療費を投じ、うち約7兆円は公債の新規発行で賄う、という三重苦の状態が温存されている。

空回りの国の計画

「病床数が多すぎる」という現状に対し、国の行財政改革や社会保障政策の枠組みで削減に向けた数々の政策が検討されてきた。しかし、病院を運営する各自治体や民間法人では、検討段階にとどまり実行に至らないことが多い。

例えば総務省は、2017年3月までに全国の自治体に対して、病院も含めた公共施設に関する「公共施設等総合管理計画」の策定を求めた。過去に建設された公共施設が大量に更新時期を迎えるとともに、人口減少により稼働率の減少が見込まれる。そこで①公共施設の総量を把握すること②長期的視点をもって更新・統廃合・長寿命化等の計画を策定すること③財政負担を軽減・平準化することを目指した。しかし多くの自治体は、すべての施設を将来もずっと保有し続ける前提で更新費用を算出している。