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市場改革で新電力が窮地に、老朽火力と原発を温存 経産省流「官製市場」の危うさ

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多くの国民の知らぬところで進められる新市場の創設。非化石価値取引市場をめぐり新電力各社が反発。「容量市場」で原発・老朽火力を温存し、巨額の国民負担発生もありうる。

CO2排出量の多い仙台市内の石炭火力発電所。容量市場を通じ、新たな収入の道も

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「改革」の名の下に、政府は脱炭素化に逆行しかねない電力取引のルール改正を進めつつある。

エネルギー政策において重要とされている考え方は「S+3E」だ。つまり、安全性(Safety)を前提としたうえで、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、併せて経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)が求められている。

政府が昨年7月に定めたエネルギー基本計画や、経済産業省が2013年から進めている「電力システム改革」も、S+3Eの考え方に基づいている。

だが、3つのEを同時に実現するのは簡単ではない。ともすれば相矛盾しかねない。

電力システム改革により電力の小売り競争が始まったことで、電力価格が低下し経済効率性が向上する一方、不採算になった発電所を電力会社が閉鎖する可能性が高まってきた。供給力(発電能力)の不足から、電力の取引価格が高騰するかもしれない。最悪の場合、発電所の閉鎖が相次ぎ、停電が多発し、安定供給が維持できなくなる。それを防ぐために考え出されたのが、供給力を価値として評価したうえで取引する「容量市場」だ。

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