【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

政府は4月10日の経済財政諮問会議で、新卒で正社員になれなかった「就職氷河期世代」を今後3年程度で集中的に支援する方針を固めた。昨年段階で、35〜44歳のフリーターなどは52万人、無業者は40万人に上る。とくに、氷河期世代の無業者数は10年前から横ばいが続く。こうした人々を安定的な職に導くことは、人材活用と将来の社会保障費抑制をもたらすことから、本人だけでなく社会全体にとっての利益も大きい。今後、具体化される施策が奏功することを期待したい。

ただ忘れてはならないのは、氷河期世代の問題はフリーターや無業者の問題にとどまらないことだ。現時点で正社員として就業する氷河期世代の人々も、卒業時に求人が多かった世代より平均的に賃金水準が低いというデメリットを被っている。こうした状況がもたらされた理由を、筆者の最近の研究に基づいて2つ指摘しておきたい。

第1に、氷河期世代の労働者は同じ年齢でも現在の会社での勤続年数が短い傾向がある。大卒よりも高卒に顕著に見られる。これは氷河期世代が新卒段階で無業者やフリーターになったり、求人の少ない時期に妥協して就職したものの景気の好転とともに転職したりすることから生じる。日本の企業は、勤続年数に応じて賃金が上がる部分が少なくなく、それが氷河期世代の賃金の抑制要因となる。