(撮影:尾形文繁)

豊田章男は、トヨタ自動車社長に就任して間もなく、リーダーの器量を問われる事件に遭遇した。2009年から10年にかけて発生した、米国に端を発した大規模リコール問題である。

米カリフォルニア州で、トヨタの高級車「レクサスES350」が暴走後に衝突し、乗っていた家族4人が死亡する事故が発生した。フロアマットがアクセルペダルに引っかかり、ペダルが戻らなくなったことが原因だった。章男の社長就任から約2カ月後、09年8月28日の出来事だ。

この後、トヨタ車の意図せぬ急加速や、アクセルペダルが戻りにくい、あるいは、ブレーキが利きにくいといった問題が次々と発生した。

トヨタは同年11月以降翌年2月末までに、米国をはじめ世界で、延べ1000万台規模のリコール、自主改修を行った。米運輸省は、トヨタ車をめぐる一連の事故や苦情について、トヨタ車の車載電子システムの欠陥、さらには意図的な『欠陥隠し』を疑った。

「グローバルビジネスを展開していると、世界のどこで、いつ、何が起こるかわからない。まるで、刑務所の塀の上を歩いているようなもので、どちらに落ちるかわからない」

これは、トヨタがグローバル企業へと飛躍した1990年代後半に、元役員から聞いた話である。