(撮影:尾形文繁)

『豊田家はずし』は本当だったのだろうか。

「豊田の姓に生まれたことにつきましては、私に選択権はございません」

2009年1月、トヨタ自動車社長昇格を発表する会見の席上、豊田章男は、そう語った。

近年、世襲をめぐっては、大塚家具、大戸屋ホールディングス、サンリオなど、ドタバタ劇を演じる企業が続出した。金融庁と東京証券取引所が中心になってまとめた2014年のスチュワードシップ・コード、15年のコーポレートガバナンス・コードの導入など、企業統治の強化、経営の透明性向上を図る動きの影響もあっただろう。

【スチュワードシップ・コード】「機関投資家の行動指針」などと訳される。機関投資家に対して、投資先企業の中長期的な成長を促すために求められる行動規範。日本では2014年2月に金融庁が策定。導入は強制ではない。

【コーポレートガバナンス・コード】上場企業の守るべき行動規範を示した指針。日本では金融庁と東京証券取引所が取りまとめ、2015年6月に適用が開始された。法的拘束力はないが、実施しない場合は理由の明記が必要。

世襲の問題は、とかく『タブー視』されがちだ。とはいえ、現社長の章男が創業家出身である以上、世襲問題は、避けては通れない。そもそも、トヨタは、れっきとした世襲企業だ。

以下は、章男が豊田家の3代目として、09年にトヨタ社長になるまでの、世襲をめぐる紆余曲折の『前史』である。

章一郎会長、奥田社長体制へ、浮上した「持ち株会社化」構想

『豊田家はずし』の危機は、二度あった。