細野祐二氏(右)と横尾宣政氏
会計評論家の細野祐二氏が「横尾宣政さんの再審無罪を支援する会」を4月25日に設立。設立発起人代表に就任した。
横尾氏は2011年に発覚したオリンパス巨額粉飾事件の「指南役」と目され、2012年に逮捕・起訴。史上最長、966日の勾留を受けた。法廷では一貫して無罪を主張したが2019年1月、最高裁で上告が棄却され懲役4年の実刑判決が確定。ただ、4月25日現在未収監で、再審請求に向け準備中だ。細野氏は元公認会計士。2004年3月、キャッツ株価操縦事件に絡み、有価証券報告書虚偽記載罪で逮捕・起訴。一貫して容疑を否認し無罪を主張するも2010年、最高裁で上告棄却。懲役2年(執行猶予4年)の有罪が確定している。
オリンパス事件もキャッツ事件も東京地検特捜部が逮捕・起訴した特捜案件である。細野氏は日本航空や旧日興コーディアルグループ(現シティグループ・ジャパン・ホールディングス)の不正会計を見抜いた人物としても著名である。東芝事件では早い段階から、東芝が高額で買収したウェスティングハウスののれん減損が問題の本質であることを指摘していた。
2018年7月、当時業績絶好調とされていたライザップの決算に隠された問題点をセミナーで公表し、事態はその後に細野氏の予測通りに進展したことから、「会計士界のレジェンド」「伝説の会計士」として注目を集めている。自らの体験と豊富な粉飾決算分析に基づき犯罪会計学の研究を続けており、その研究成果が5月下旬に『会計と犯罪』として岩波書店より出版される。

 

――細野さんはなぜ「横尾宣政さんの再審無罪を支援する会」を結成したのですか。

細野祐二(ほその・ゆうじ)/1953年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1978年からKPMG 日本およびロンドンで会計監査とコンサルタント業務に従事。1982年3月、公認会計士登録。2004年3月、キャッツ株価操縦事件に絡み、有価証券報告書虚偽記載罪で逮捕・起訴。一貫して容疑を否認し無罪を主張するも2010年、最高裁で上告棄却。懲役2年(執行猶予4年)の有罪が確定。公認会計士登録抹消後、現在は会員制の「複式簿記研究会」を主宰。自ら開発した「フロードシューター(IT型財務分析プログラム)」を駆使して全上場企業の財務諸表危険度分析に挑戦中。他に会計評論家として著書執筆や講演。

細野 横尾さんは無実だからだ。私は『粉飾決算 vs. 会計基準』(2017年刊)において横尾さんの無罪を主張したが、今回、事件記録一式を拝見して、横尾さんの無罪をさらに確信するに至った。横尾さんは完全に無実であり、そのことに私は100%の自信がある。横尾さんは966日も勾留された。それ自体信じられないことだが、長期勾留はいかに有罪の証拠がなかったことの裏返しだ。

――細野さんは横尾さんをどう見ているのですか。

細野 横尾さんのやってきたことは、あまりにも稚拙でみていられなかった。メディア対応を含めて、やらなければいけないことをやらずに、やってもしょうがないことを一生懸命やっている。言ってもしょうがないことをべらべらと話し、言うべきことを言っていない。そんなふうに思ってみていたところ、再審請求をおやりになると聞いた。

犯罪会計学を深める一環として、オリンパス事件の事件資料はすでに読み込んでいた。これは何とか横尾さんの力になりたいと思った。戦後、再審無罪となった事件は21件あるがすべて物証型の一般刑事犯であり、経済事件は1件もない。経済事件は物証がないために再審は理論的に不可能と痛感する一方で、誰かが最初に井戸を掘らなければならない(=経済事件で再審無罪を勝ち取らなければならない)。それを横尾さんがおやりになると言っている。ならば、横尾さんの再審無罪を支援しなければならないと思った。

――オリンパス事件を掘り下げていき、横尾さんが無罪になるのならば、無実の者を供述調書で強引に有罪へと導く捜査機関=特捜部はいらないという結論にたどりつくのでは。

細野 刑事訴訟法には「捜査は警察が行う」と書いてある。一方で、「必要と認めた時には検察も捜査ができる」とも書いてある。特捜部はこの「できる規定」を使って捜査している。

この「できる規定」は、警察が捜査できないほどの巨悪があるから検察に捜査権を与えているという理屈になっている。ただ、本来警察とは利害を異にすべき立件主体(=検察)が自ら捜査をするという点で、内部統制が機能しない。捜査をしたら立件したくなるのは人情として当たり前。捜査が適正に行われたのか、被疑者の権利保護が十分なされているかを精査するのが検察の仕事であり、近代経済司法の基礎理論である。捜査と立件の両方を検察が独占して行えば、内部統制は機能しない。

内部統制違反に伴う不利益は、国民が圧倒的に特捜部を支持することで免責される。東京、大阪、名古屋に特捜部が常設されているのは、国民が特捜検察の存在を常時必要と認めているから。圧倒的な信頼や支持を国民から受けているからだ。そうでなければ、立件も捜査も行うことによる内部統制違反への不信は拭えなくなる。

それが村木厚子さんの冤罪事件によって、特捜部は社会からの信頼を失った。大阪地検特捜部の問題だ、大阪地検特捜部の部長や副部長の個人的な問題だと矮小化することで、最高検察庁は特捜部の存続を図った。部長や副部長に詰め腹を切らせることで、組織の温存を図った。しかしながらオリンパス横尾事件や日産ゴーン事件を見るにつけ、特捜部の存在はもはや堪え難いものとなっている。

特捜部はGHQが作った

――起訴・不起訴を決める検察が捜査も行っているのは、先進国中では日本と韓国ぐらいですね。なぜ日本では検察が捜査をしているのでしょうか。