中国に大半の工場を置く鴻海精密工業の郭台銘董事長は米国での工場建設を発表。トランプ米大統領と接近図る(Getty Images)

ハイテク覇権をめぐる米中間の対立が激化していた昨年末、台湾産業界に激震が走った。

2018年11月、米国のジェフ・セッションズ司法長官(現在は退任)がワシントンで記者会見を開き、台湾の大手半導体受託製造企業である聯華電子(UMC)と同社の関係者3人を「経済スパイ法」で起訴したと発表したのだ。

UMCは1980年に台湾経済部(経済産業省に相当)所管の工業技術研究院から派生して生まれた台湾を代表する半導体メーカーだ。16年、UMCは中国の国有半導体メーカー・福建省晋華集成電路(JHICC)とメモリー半導体DRAMの製造開発に関する契約を締結。UMCは技術供与を行った。ところがその中心メンバーが、JHICCの事業で利用するために、過去に在籍していた米半導体大手マイクロン・テクノロジーの台湾法人で機密情報を盗んでいたとの疑いが出たのだ。

「会社として意図して米国企業の技術を窃取し、流出させたわけではない。米国企業の技術を欲しがる中国に利用された。われわれも被害者だ」。UMCの幹部は本誌記者にそう訴えた。

台湾に経済スパイ疑惑、米中に挟まれる苦悩

中国は15年に別の国有半導体企業である紫光集団を通じてマイクロンの買収を試みたが、米国政府の反発で失敗した経緯がある。現地の関係者は「まずUMCとの関係を深めたほうがマイクロンの技術に近づきやすいと考えたのだろう」と中国側の動きを読み解く。