イデオロギーと日本政治―世代で異なる「保守」と「革新」
イデオロギーと日本政治―世代で異なる「保守」と「革新」(遠藤晶久、ウィリー・ジョウ 著/新泉社/2800円+税/276ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
えんどう・まさひさ●1978年生まれ。早稲田大学政治学研究科博士後期課程単位取得退学。現早稲田大学社会科学総合学術院准教授。博士(政治学)。
Willy Jou●1979年生まれ。カリフォルニア大学アーバイン校政治学博士課程修了。現早稲田大学政治経済学術院准教授。Ph.D. in Political Science。

若者は政党の差を感じず、自民党の本質が浮き彫りに

評者 中央大学商学部教授 江口匡太

政治のあり方を考えるには、座標軸があると争点が明確になり、わかりやすい。昭和の頃によく使われた座標軸が、タイトルにもある「保守」と「革新」である。

大まかに言って、「保守」は右派であり、自民党を中心とした政党群であり、自由経済体制を是とし、資本(会社経営者)側であり、農村部を中心とする。対する「革新」とは、左派であり、旧社会党と共産党を中心とする政党群であり、社会主義を志向し、労働(労働組合)側であり、都市部を中心としていた。

しかし、今となっては、社会党の直接の後継である社民党の存在感はないし、労働組合組織率も長く低下の一途をたどっている。近年では自民党政権が経営者に賃上げを要請するまでになった。この座標軸を用いて、現代の政治を説明するのは無理がある。そのことを本書は裏付けている。

これまで、自民党が「保守」、共産党が「革新」に分類されてきたが、この傾向が当てはまるのは50歳代以上で、若年世代であるほど当てはまらない。2012年の総選挙では、若年世代において、「革新」と聞いてイメージされる政党は日本維新の会やみんなの党であり、共産党はむしろ保守的とみなされていた。

「保守と革新」、「保守とリベラル」、「右派と左派」の3つのどの軸でも、50歳代以上は自民党と共産党を両極に位置付けるが、20〜30歳代で自共が両極に来るのは、「右派と左派」だけである。また、年齢が高いほど政党に違いがあると認識しているが、若年世代であるほど差がないと認識しているという。つまり、若い人ほど政党の選択肢がないと感じていることになる。

イデオロギー対立が残っていた昔と違い、「保守と革新」、「右派と左派」のような二項対立で説明するのは確かに難しい。しかし、単純な対立軸があるからこそ、国民は政治について考えることができるし、政治家も政治勢力としてまとまり、政権を担う集団を作ることができる。年齢によって政治勢力の分類が異なるという本書の結論は、冷戦終了後、「保守」に対抗する軸が形成されなかったことを示唆しており、自民党に対抗する政党が存在しない現状とも整合的だ。

そもそも日本の「保守」自体が曖昧な存在なのだろう。かつて社会党と連立を組んだように、政権を取るためなら自民党はなんでも呑み込む。本書の調査から自民党の姿があぶり出されているようで興味深かった。