(イラスト:谷山彩子)

現在の日本では、さまざまな組織やコミュニティーで「リーダーシップ」が課題になっています。では、優れたリーダーシップとはどのようなものでしょうか。今回は、まさにリーダーシップの発揮そのものが職業の核になっている指揮者について考察してみましょう。題材は、ヘルベルト・フォン・カラヤンです。

20世紀を代表する指揮者の一人といえるカラヤン。1955年から1989年まで30年以上にわたって、世界最高のオーケストラとして名高いベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の終身指揮者・芸術監督を務めました。音楽の演奏では指揮者という立場で組織を率い、同時に世界最高の管弦楽団の運営という面でもリーダーシップを発揮したわけです。

さらにカラヤンは、このような重職を担いながら同時並行で、こちらも名高いウィーン国立歌劇場の総監督やザルツブルク音楽祭の芸術監督なども長期にわたって務めていました。クラシック界における「超」のつく重要ポストを独占し、日本では「楽壇の帝王」などと評されました。ライバルと競り合いながらこのような地位を獲得し、それを長期間維持するためには、一種の政治的なセンスが必要だったことは言うまでもありません。戦時中はうまくナチスに取り入ることで指揮者のポストを獲得し、戦後は業界の帝王であったフルトヴェングラーの嫉妬をうまくかわしてその後釜に座るなど、カラヤンには超一流の政治的センスが備わっていました。こういった点と、いかにも指揮者然とした眼光鋭いクールな風貌とが相まって、高圧的な独裁者というイメージが強いようです。

しかし、権力をかさに着て威圧するだけのリーダーがこれほど長きにわたって高い成果を生み出すことはありません。強く、美しいものがしばしばそうであるように、カラヤンという存在もまた大きな矛盾を抱えた存在であったように思います。