【今週の眼】柳川範之 東京大学大学院教授
やながわ・のりゆき●1963年生まれ。慶応義塾大学通信教育課程卒業。93年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。東京大学助教授などを経て2011年から現職。主著に『法と企業行動の経済分析』『独学という道もある』など。(撮影:今井康一)

マクロ経済に関する数字が、経済の実態を把握するうえで重要なことはいうまでもない。しかし、それが意味するところをよく理解していないと、場合によっては誤った認識を持ってしまう可能性もある。

なぜなら、マクロ的な数字は、複雑な経済活動を集計して作られたものだからだ。例えば、最近は人手不足が叫ばれているが、当然、すべての産業、すべての業務で人手不足が生じているわけではない。実際には、人材の種類によって需給は大きく異なってくる。

物価上昇率にしても、国全体の物価上昇率と同じ率で価格が上がっている財が多くあるとは限らない。例えば物価上昇率がゼロだったとしても、すべての財の価格が同じだったとは限らず、極端にいえば10%値上がりした財と10%値下がりした財が半々だったかもしれないのだ。