気象データ連動の新型保険は農家を救うか 算出した保険金と農家の損失が一致しない課題も

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気候変動や自然災害で農業を取り巻く環境が変わる中、農作物の収穫量や価格の変動リスクは大きく、農家への影響は深刻である。農家は支出を維持するために、古くからさまざまな方法で対処してきた。これまでの研究では、貯蓄を取り崩す、家畜などを売却する、異常気象に強い品種に替える、兼業などで収入源を多様化する、農家間で助け合うなどが報告されている。しかし、村や地域全体で被る自然災害に対して、伝統的な対処法では限界がある、とも報告されている。

このようなリスクをカバーする保険として、農家を対象とした「収入保険」が多くの国で提供されてきた。同保険は、自然災害や農産物の価格低迷で農家の収入が減った場合に補償するものだ。しかし、通常の収入保険の問題点としては、情報の非対称性がある。例えば、収入の減少が本当に天候によるものなのか、それとも保険金を受け取ることを見越して適切な労働投入を行わなかったのか、保険会社には判別できない。さらに、個々の損害を個別に査定する必要があるため、保険金支払いの手続きが非常に複雑である。これらの問題があるため、収入保険は民間ビジネスとしては世界的に見ても極めて限定的で、政府など公的機関が提供しているのが現状だ。

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