ドラマチックな音楽をバックに、ハリウッド女優が挑むような目でカメラを見つめる。商品の特徴や売りはおろか、商品名すら出てこない。ヨーロッパのハイブランドなどによく見られるテレビCMである。見る人の心を動かし、記憶の構造を書き換える。いざというときに「想起」してもらったり、好きになってもらったりすることを目的としている。

この手の広告に関しては、広告関係者の間でも誤解がある。「ブランディング目的だから売り上げは二の次」というものだ。寄付や宗教の勧誘、人材採用などにもブランディングは活用される。しかし、ブランディングがビジネス目的である限り、その効果としての売り上げを度外視することはありえない。

広告制作を発注したブランドの担当者、あるいはその担当者が従うルールの策定者でもいい。彼らは最終的に売り上げを伸ばすための手段として、ブランディングを考えているはずなのだ。誤解が生じるのは、ブランディングの裏でつねに2つの視点が交錯しているためだ。筆者はこれらをPL(損益計算書)視点のブランディングとBS(貸借対照表)視点のブランディングと呼んでいる。話を単純化するために、ブランディング=認知獲得だとここでは考えてみる。

「スイミー」のブランド力

PL視点のブランディングとは、売り上げやシェアなどの当期の目標があって、そこから逆算で必要な認知を獲得していく活動である。何人が認知すれば、そこから何人が購入し、さらにそのうち何人がリピートする、よってこれだけの売り上げが得られる。そのようなシミュレーションから、必要な認知を獲得していく。結果はその期のPLに、費用(広告費)や売り上げとして計上される。