週刊東洋経済 2019年4/13号
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昨今、民間企業や公的機関で大流行のソフトウェアがある。定型業務を自動化する「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)のソフトである。

矢野経済研究所は、2018年度のRPAの国内市場規模が約418億円に上り、前年比2.3倍に拡大したと発表。19年度以降も年率1~3割増の成長が続くと推計している。

RPA盛況の背景には、人手不足のため単純作業を削減したい思惑がある。最近の特徴は、その動きが公的機関にも広がっていること。「地方分権で業務が増えているのに、役所は人員を削減してきた。人手不足が避けられず、導入の機運が高まった」と、みずほ情報総研の谷田貝亨一氏は語る。

歴史上一貫して続いた仕事の自動化の動き

ただ大きなトレンドを俯瞰すると、RPAは『仕事の自動化』という流れの一部ともいえる。今やAI(人工知能)技術は第3次ブーム期に突入し、自動運転など社会の隅々で活用されつつある。さらにロボティクスも製造現場などで普及。あらゆるモノがインターネットにつながるIoT時代の到来も迫る。これらの技術革新によって自動化が進み、機械がますます人間の役割を代替しようとしている。

仕事の自動化は、歴史上、一貫して続いてきた動きでもある。第1次産業革命では蒸気機関が誕生、工場での大量生産が可能になった。

その後電力が導入された第2次産業革命、コンピューターが発達した第3次産業革命でも、自動化の動きは続いた。今のAI、ロボティクス、IoTの普及の流れは、第4次産業革命に位置づけられる。

では、この先の自動化による影響はどうなるのか。

労働人口の47%が機械に代替される──。13年、論文でそうした定量的予測を発表し、雇用の未来に関する議論を巻き起こしたのが、英オックスフォード大学のカール・B・フレイ博士とマイケル・A・オズボーン准教授だ。論文では、米国で10~20年以内に70%以上の確率で予測が実現するとしている。

15年には野村総合研究所がオズボーン氏らと共同で、日本における同様の予測を発表。同じ条件下で、日本では「労働人口の49%が機械に代替される可能性が高い」との検証結果を発表した。

「今後AIに仕事を奪われる」。当時、センセーショナルな定量的予測と併せ、そのように不安をあおる報道が相次いだ。ただ、その予測は、特定の条件下でのもの。欧米の専門家の間では、フレイ&オズボーン論文の不十分な点が次々と指摘され、より精度の高い未来予測が発表されていった。

経済産業研究所の岩本晃一上席研究員は、「雇用の未来研究ではフレイ&オズボーン論文よりも、その後に発表されたアーンツ論文のほうが功績は大きい」と指摘する。アーンツ論文とは、独ZEW研究所のメラニー・アーンツ氏らが発表したもの。フレイ&オズボーン論文では考慮されなかった「タスクベース」の変化を踏まえている。

本来、仕事はさまざまな業務(タスク)の積み重ねである。いくら自動化が進んでも、実際には職業そのものが機械に置き換わるわけではない。その一部のタスクが置き換わっていくのだ。

そうした現実を踏まえたアーンツ氏らの研究結果を基にOECD(経済協力開発機構)がリポートを発表した。そこでは、自動化の可能性が7割を超える職業はOECD21カ国平均で「9%」という予測となった。

定量的予測が含まない4つの現実の要素