【今週の眼】苅谷剛彦 英オックスフォード大学教授
かりや・たけひこ●1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

2020年から使われる小学校教科書の検定結果が発表された。報道によれば、ページ数が現行と比べ平均10%増える。その主な理由は、「若手教員への指導技術の伝承が難しくなっている」(中央教育審議会答申)ことに対応して、教え方についての「親切設計」を行うためという(3月27日付朝日新聞)。教室での板書や発問の具体的な例示を含むようになったというのだ。

教員の働きすぎが問題視され、「働き方改革」が求められている。高齢教員の大量退職を受け、公立小学校の教員採用倍率は低下傾向にある。07年に小学校の採用倍率は4.6倍であったが、16年には3.6倍に落ちた。企業の求人で、採用倍率が4倍を切っている場面を想像してみるとよい。大学受験の段階でも、教員養成関係学部への入学は今や広き門だ。教員志望者は、必ずしも同世代の優秀な人材とはいえない。

このような背景を考えると、教科書の親切設計が必要なことにも納得がいく。納得しづらいのは、そうまでして進める教育改革の思考様式であり、改革の実現可能性である。